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【南スーダン】不自由なく学校に通える環境をつくるには ―紛争が人や国の成長に及ぼすもの―

広大な運動場で走りまわる生徒たち。木の下では女子生徒がおしゃべりをしている。土壁の校舎から、元気な声が聞こえてきた。
昨年4月、南スーダンの首都ジュバ市内の小学校に視察に行った際、この学校には何の問題もないように見えました。しかし校長先生に話を聞くと、生徒は約1400人もいるのに、「トイレは3棟のうち2棟は壊れて使えません。いま使えるのは男子用と女子用でそれぞれ便器スペースが1部屋ずつだけです」と言います。予想外の答えに、思わず聞き返してしまいました。私が通っていた小学校も生徒が1200人ほどいましたが、もし6年間の学校生活で2基しかトイレがなかったらと思うと、ゾッとしました。

【写真説明】完成した学校トイレを前に生徒と近所の子ども達が興味津々
生徒たちはどう思っているのか。女子生徒の一人は「学校で勉強中にトイレに行きたくなったら、昼休みに家に帰るまで我慢するの」と話し、低学年の生徒は「おなかが痛い時は学校にトイレがないから学校を休むの」と答えました。どう考えてもトイレの数が足りていない。同行した地元の提携団体のスタッフは驚く私に、「びっくりした?でもこの辺りでは学校のトイレ不足は普通のこと。少しでもトイレを増やして授業を受けられるようにしてあげたいよね。やっと子ども達が平和に学校に通えるようになったのだから・・」と説明してくれました。この視察後の昨年7月、ジュバ市内で始まった政府軍と反政府軍の衝突はこの小学校近くで起きました。いまも続く内戦の引き金となった出来事です。紛争では周辺地域の井戸が崩壊したため、この学校の井戸に住民が一時殺到しましたが、その後ここも壊れてしまいました。
昨年7月からのPWJの事業では、この学校トイレ建設と壊れた校内の井戸修理を行いました。トイレ建設の途中でセメントや木材が不足し、トイレ建設を中断する事態に。その背景には、隣国ウガンダからの建設資材を運ぶ幹線道路沿いで紛争が激化し、ジュバ市内の物資が不足、さらに急激なインフレーションで物価が1年前の数倍に膨れあがった、という事情があります。何とか予算をかき集め、今年3月にようやく学校トイレが完成しました。業者からの提案で障害がある生徒のためにスロープや手すりも取り付けました。先日、学校の先生からトイレを理由に授業中に帰宅したり、欠席したりする生徒が少なくなったとの報告をいただきました。

【写真説明】完成した学校のトイレと手洗い場/学校トイレ完成式で手洗いの歌を披露する衛生クラブメンバー達
今回のトイレ建設で世界一若い国、南スーダンの国づくりの課題が浮き彫りになりました。治安悪化に伴う物資不足、インフレによる価格高騰は、将来の南スーダンを担う子ども達が不自由なく学べる環境づくりを大きく妨げています。そんな中でも、この学校に通うある生徒は「今日も友達と学校で会って一緒に勉強できるから嬉しい」と笑顔を見せ、兄からおさがりしたぼろぼろの教科書を大切そうに見せてくれました。その笑顔を向けられるたびに、いつも、「私たちの支援はこの子どもたちの将来に繋がっているのだろうか」と自問しつつ、それでも今の状況が少しでも改善すればとの思いを駆り立ててくれます。NGOよる支援活動の長所の一つは、住民との距離が近いことだと思います。同じ目線で彼らの声に耳を傾け、それに応えるべく活動ができるからです。いつか住民たちが平和で健康的な生活を自らで生み出していける日が訪れることを信じて、今できる限りの支援活動を続けていきます。

【写真説明】修理した構内の井戸を使う生徒と近所の女性たち
 

南スーダン事業担当 井上恭子

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