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【PWJスタッフインタビュー】-アフリカ難民支援を開始して13年、PWJの今後の挑戦-

2013年6月に横浜で開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD V)に合わせ、アフリカで支援を続けるNGOのシンポジウムが開かれました。スピーカーとして出席したピースウィンズ・ジャパン事業部・齋藤雅治(以下、PWJ齋藤)は「アフリカの食糧危機では、食糧を配布する以外にも選択肢がある」と、ニジェール支援事業での経験を語りました。
写真①支援現場へ足を運ぶPWJ齋藤写真① シンポジウムの様子
写真左:支援現場に足を運ぶPWJ齋藤、右:シンポジウムの様子
後日、PWJ齋藤にニジェール事業をはじめとするアフリカ支援の意義について話を聞きました。
-自身が関わったニジェールでの支援について教えてください。
PWJは、2012年アフリカのサヘル地域での干ばつによる食糧危機に対応し、ニジェールで支援を開始しました。私たちの事前調査によって、食糧は市場で手に入ることがわかったので、今回は「キャッシュ・フォー・ワーク」というプログラムを約3か月にわたって導入することに決めました。これは、土地整備の作業に従事した人びとに労賃を現金で渡すことで、自ら市場で食糧が買えるようにする支援プログラムです。
ニジェールでの現地ルポはこちらから
写真②土地整備に携わる人びと写真③労賃の受け取り
写真左:土地整備に携わる人びと 右:労賃の受け取り
-「キャッシュ・フォー・ワーク」のメリットは何ですか。
このプログラムの最大のメリットは、人びとが食糧を手に入れるための現金が短期間で手に入るだけでなく、村の共用地を整備する機会にもなることです。数年後、整備した土地が緑地となれば、村人が家畜を連れていき草を食べさせることができ、長期的な観点からも村にとっての利益をもたらします。
写真④半月型に土地を整備写真⑤村にとって家畜は大切な資源
写真左:半月型に整備された土地 右:村にとって家畜は大切な資源
-パートナー団体である米国NGOのMercy Corpsとの協働だったそうですね。
はい。Mercy Corpsは2005年からニジェールで人道支援の活動をしています。初めての地域で事業を始める際に、パートナー団体がいることはとても心強いものです。彼らが蓄積した知識やノウハウを活かすことができましたし、なにより彼らは地元の人たちとしっかりとした信頼関係を築いていたので、円滑に事業を進めることができました。
写真⑥事務所での会議写真⑦現場で食糧事情を調査
写真左:事務所での会議 右:現場で食糧事情を調査
-昨年11月で活動を終えたニジェール以外にも、現在PWJはケニアや南スーダンなど、他のアフリカ地域で支援を続けています。
自然災害に起因する食糧不足や、紛争による難民発生などは、ニジェールに限らずアフリカの各地、そして世界のどこでも起きる問題です。ケニアでは、ソマリアでの紛争を逃れた難民を受け入れているキャンプでの支援を行っており、南スーダンでは紛争後に故郷へ帰還する人びとの再定住を支援しています。こうしたさまざまな問題に対する解決策を見出して成果を積み上げていくということは、次の人道危機に対応する能力を蓄えていくという意味があると思います。また、アフリカで起きているさまざまな事象に取り組むことで、PWJのみならず、NGO全体の支援の質を高めることにつながると考えています。
写真⑧ケニア難民キャンプで提供する仮設住宅OLYMPUS DIGITAL CAMERA
写真左:ケニア難民キャンプで提供する仮設住宅 右:南スーダンで建設した井戸を使う子どもたち
-支援を続ける上での課題は?
人道危機といっても、ひとつの要因だけで起きているわけではなく、自然災害による食糧価格の高騰や、紛争による避難民の発生など、いろいろな要因が複合的に絡み合っています。
また、現場の事情も複雑で、私たちの支援も簡単に進まないことがたびたびあります。たとえば南スーダンでは井戸やトイレを建設していますが、部族間衝突により治安が悪化した場合には、スタッフの移動のたびに細心の注意を払います。また、トイレを建設した地域で紛争が起こると、人びとが他へ避難してしまい、トイレが使われなくなることもあります。
事業現場における極めて不透明な治安状況の中で、私たちはこれからも常に新しい挑戦に立ち向かっていかなければならないと痛感しています。
インタビューを終えて
今回のインタビューから、アフリカでは、過去の経験を当てはめるだけでは予測できない現在から未来にわたるさまざまな課題が山積する中で、より効果的な支援を進めていくことの難しさを改めて実感しました。これまでの人道危機で繰り返される「水不足や干ばつなど災害が起きる→難民が発生する→緊急事態に対応する一過性の支援」という流れを立ち切るために、様々な状況に応じた包括的な解決策を提示していくことが必要となっています。そこに生きる人びとのResilience(回復力)を高めること、またそれぞれの尊厳を守りながらコミュニティの持続的な発展へとつなげていくこと。複雑化するニーズに合わせて、今後私たち支援団体の存在意義がますます問われることになりそうです。
聞き手:コミュニケーション部 山下智子
Mercy Corpsとは
1979年設立の米国ポートランド市に本部を置く国際人道支援NGO。世界各地で緊急・復興支援を展開。PWJと提携関係にあり、ニジェールや中国、東北被災地などで協働の支援活動を行っています。
※齋藤雅治 プロフィール
2002年7月にPWJに入職。海外事業部(現:事業部)にて、リベリア、南スーダンなどの事業を担当。直近では、2012年8月から11月までニジェールで食糧危機対応のための初動調査および住民対象のキャッシュ・フォー・ワーク事業の現地統括を務めた。

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