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私たちの活動

【ウクライナ】ウクライナ国内避難民に心のケアと支援物資を届けています

ピースウィンズでは、ウクライナのNGO「Right to Protection(R2P=「保護の権利」という意味)」とパートナーシップを組んで、リヴィウ、ヴィニッツァ、チェルノフツィの3つの州を中心に、ウクライナにとどまる国内避難民と彼らを受け入れるホスト地域の人々の心のケアを続けています。
 

   
図書館でグループカウンセリングを開くことも

 
ウクライナを代表するNGOのひとつであるR2Pの特徴は、法律家と心理学の専門家らで構成され、機動的に動くモバイルチーム。彼らは毎日、避難所や知人宅などに身を寄せる国内避難民を訪ねています。お年寄り、車いすを必要とする人、シングルペアレント家庭、3人以上の子どもがいる家族など、事前に調査を行なって、より支援を必要とする人々を優先しています。
 


必要な人に支援が届くように

 
リヴィウのある避難所で開かれたグループカウンセリングの様子を、ピースウィンズのウクライナ人スタッフが見学しました。穏やかで友好的な空気の中、避難民とホスト地域の住民が一緒に参加するセッションでは、絵を描いたりするアートセラピーや、「親密さ」といったテーマについてグループごとに体験を語り合ったりすることで、参加者は知らなかった自分の新たな側面に気づいたり、口にできなかった悩みを共有するなど、楽しみながら心の荷物を軽くできることを実感していました。心理学の専門家に促されて、互いに「ありがとう」と言ってみるだけで暖かい気持ちになれて良かったと語る参加者もいました。
 
地元住民として参加した図書館司書のリリヤさん(85歳)は、人生3度目の癌と闘いながらも人生を前向きに生きている自らの物語を語ってくれました。避難民の参加者もリリヤさんの話に励まされ、互いに支え合おうと約束していました。避難民と地元住民が一緒に語り合う機会は、互いの気持ちや立場を理解する手助けとなり、参加したみなさんは、こうしたグループカウンセリングにまた参加したいと話していました。
 


リリヤさん(左から4番目)

 
個別のカウンセリングを受けた中には、ヘルソン州から避難してきたピアニストのカップルがいました。音楽大学で知り合った2人は人生を芸術と音楽に捧げてきました。冗談を交えながら明るく振る舞っていましたが、話を聞いていると、自宅に残してきたグランドピアノを心配していることがわかりました。ふるさとの町からロシア軍は撤退したものの、散発的な戦闘は続いていて、帰れる状況ではありません。2人が安心して愛着のあるグランドピアノに向かうことのできる日が一日も早く来ることを祈るばかりです。
 


ピアニストのカップルとピースウィンズスタッフのカテリーナ

 
 
●物資の配付も始まりました
 
モバイルチームは、食料や衛生用品の配付も始めました。4月だけで、5,000セット以上の食料支援と2,000セット以上の衛生用品を届けることができました。
 
昨年8月以来、食料支援は受けていなかったと語るヴァレンティナさん(57歳)は、年齢制限のために避難先で新たな仕事を見つけることができず、食料価格が高騰している中、食料支援はとても助かると話してくれました。
 


ヴァレンティナさん
 

ビクトリアさん

 
母親と共にドネツク州から避難してきた17歳のビクトリアさんは、もっとも戦闘の激しい地域で3ヶ月間耐えていましたが、5月25日、自宅が爆撃を受けて何もかも失ってしまいました。ウクライナ軍の支援を受けて命からがらリビウに逃れてきた母娘は、避難所で暮らしながら生活の再建を図っています。母親を助けたくても未成年で仕事に就けないため、食料支援がうれしいと話してくれました。
 
 
●避難所以外で生活する人への物資提供が高く評価されています
 
避難してきた人の中には避難所ではなく、自分でアパートを借りて避難生活を続けている人も数多くいますが、避難所に比べて、こういう人たちへの支援の手は届きにくくなっています。個々人の家庭を回って支援物資を届けるR2Pチームの仕事は、ドロホビチ市当局から高く評価され、市から感謝状が渡されました。「支援が避難所に集まりがちな中、地元コミュニティで暮らす避難民に目を向けてくれたのはR2Pが初めてです」と、社会保護局の担当者は語ってくれました。
 


ドロホビチ市から贈られた感謝状

 
 
●配付チームの中に避難民もいます
 
食料配付チームにも、避難生活を送る人がいます。R2P職員として働くドミトロさんは、東部ドネツク州が親ロシア派に占領されたために2015年、妻と共に少し南のヴァルノヴァーハへ逃れました。ところが2022年の戦争でロシア軍が入ってきたため、再度、西のリビウに避難せざるを得ませんでした。義理の母と障害のある甥も連れて。元々運転手だったドミトロさんは、R2Pが運転手を募集していることを知り、応募したといいます。自分自身が避難民として、その辛さをよくわかっているだけに、食料配付チームの一員として、他の避難民の役に立てて幸せだと話してくれました。いつも前向きな態度で、未来は良くなると信じている彼の姿は、まわりの人々を励ましています。
 


ドミトロさん(左)

 
 
●法律相談にも乗っています
 
R2Pモバイルチームの法律専門家は、食料を配ったり、カウンセリングをするのと並行して、無料で法律のアドバイスをしています。
 
3月のある日、リヴィウで開かれた法律説明会では、戦争で破壊された家財の補償を国からどのように受けるかの説明がありました。これは、ウクライナ国内で避難している人たちの関心が高い課題です。さらに、申請手続きに必要な書類の書き方や、書類を手に入れるためのデジタルサービスの利用の仕方も説明されました。説明会の後半、参加者は個別に困っていることへの法的アドバイスを受けることができました。
 


法律説明会の様子

 
 
●精神疾患のある人々
 
心のケアを受ける人の中には、避難する前から精神疾患のある人のための施設にいた人もいます。特別なケアが必要な人たちです。R2Pのチームが出会った中には、砲撃が続き、原子力発電所で事故の起きる危険性が高まったザポリッジャの施設から逃れて来たマリーナさんがいました。精神疾患と頻繁な記憶の喪失に悩んでいますが、新しい施設では安心して暮らすことができ、前の施設では許されなかった携帯電話や私物を持つことができてうれしいと話してくれました。愛着のある品物を手元に置ける喜びが伝わってきました。
 


マリーナさん
 

修道院を改装した施設

 
修道院だったところを改装したこの施設には、避難者26人を含む146人が暮らしており、R2Pとピースウィンズのチームは、今後、この施設に衛生用品と簡易医療器具を提供する予定です。
 
本事業はジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しています。
 
 
ウクライナでの混乱が続く中、心のケアを必要とする避難民と、彼らを支えるホストコミュニティの負担は大きくなっています。引き続き、みなさまのご支援をよろしくお願いします。
 
 

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