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【モルドバ】障害のあるウクライナ避難民に医療ケアを提供しています

紛争や災害の現場では、障害を持つ人々や高齢者など、弱い立場にある人々への支援が置き去りにされがちです。ピースウィンズは、モルドバ国内で長い間、障害者を支援してきた現地NGOであるKeystoneと提携し、障害を持つウクライナ避難民の中でも特に医療ケアを必要とする方に支援を届けています。Keystoneは医師や医療の専門家を擁する団体です。

首都キシナウから南西に約65㎞、ルーマニアと隣接するヒンチェスティ県のカルピネン村にも、ウクライナ避難民が滞在する一時避難所があります。ここに滞在するヴァシリーさんは、ウクライナ南部オデッサ州の港湾都市イズマイル出身。穀物輸出の要衝でもあるイズマイル港はたびたびドローン攻撃を受けており、昨年9月には犠牲者が発生しました。

ヴァシリーさんは脚が悪く、普段から杖が手放せません。さらに、もともと緑内障と白内障を抱えていましたが、避難後症状が悪化し、ほとんど視力が失われてしまいました。避難所では周囲の人々の助けを借りて暮らしていました。

部分的にでも視力を回復するには、白内障の手術が必要でしたが、ヴァシリーさんには高額な手術費を支払う余裕はありませんでした。そこでKeystoneは、ピースウィンズを含む複数の支援団体と相談の上、手術をしてくれる首都キシナウの病院医師らと協議を重ねました。その結果、ヴァシリーさんは片目の白内障手術を受けることとなりました。ピースウィンズは、この手術のために必要な検査費用を支援しました。

昨年11月に行われた手術は無事成功。視力は部分的ながら回復し、ヴァシリーさんは日常生活を自分で行えるようになりました。Keystone医師の巡回検診に同行したピースウィンズ・モルドバ事務所のスタッフに、ヴァシリーさんは「何も見えないときは、まさに霧の中にいるようだった」と、不安だった術前の日々を語ってくれました。「今では自分でトイレにも行けるし、部屋の掃除だってできるようになった。本当は外にも出たいのだけれど……」と言いながら、直前の記録的大雪のあとでまだ雪の残る窓の外を指さしました。巡回検診に来たKeystoneのタチアナ医師に、まだ外は寒いし滑りやすいから今日は外に出ないほうがいいといわれて少し寂しそうなヴァシリーさんでしたが、暖かくなったら散歩もできるようになるでしょう。訪問の最後には、居住スペースの出入り口まで見送ってくれました。

ウクライナで戦争が始まってから2年が経過しようとしている現在でも、隣国モルドバでは約11万人のウクライナ避難民が生活しており、欧州最貧国として自らも多くの社会課題を抱えるモルドバ社会にとり、大きな負担となっています。ピースウィンズは、今後もウクライナから避難してきた人々への支援を続けていきます。

この事業は提携団体Keystoneと協働して、ジャパンプラットフォームの助成によって実施されています。

 

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