【南スーダン】南スーダンの平和構築に寄与する人道支援を
7月9日は、南スーダン共和国（以下、南スーダン）の独立記念日です。2011年7月9日に現在のスーダン共和国から独立した南スーダンは、その後も情勢悪化、経済悪化、干ばつや洪水の発生など気候変動の影響も受け、現在でも人口の約70％にあたる900万人が何らかの人道支援を必要としています。ノルウェー難民評議会が毎年発表する「見過ごされている避難危機」の国の一つである南スーダンは、約200万人の国内避難民を抱え、さらに約35万人にものぼるスーダンやエチオピアなど近隣諸国からの難民を受け入れており、深刻な避難民危機を抱えているものの、国際社会からの支援は減少傾向にあります。
ピースウィンズは、南スーダンが独立する前の2006年からスーダン南部で活動を開始し、現在も首都ジュバのある中央エクアトリア州、スーダンと国境を接するアッパーナイル州と北バハル・エル・ガザル州にて、避難民、帰還民、難民、そしてそれらの人びとを受け入れるコミュニティの人びとを対象に、給水衛生と生計支援を行っています。
ピースウィンズの活動は、生命の維持と尊厳のある生活の確保、さらに生活再建を目的としたものですが、それぞれの活動を行うなかで「どのように南スーダンの平和構築にも貢献できるか」を意識して事業を形成、実施しています。その意識を体現して、実際の活動で大切にしていることが「対話」と「参加」です。
まず、避難民、帰還民、難民など特定の支援を受ける人だけでなく、活動を実施する地域のコミュニティの人びととも「対話」する場を設け、彼らが面している課題と必要とされる支援の調査、活動の目的の共有や合同活動モニタリングなどを行っています。できる限りすべての属性の人びとと「対話」をして事業を形成し、活動への理解や協力を得ることで、ピースウィンズの活動によって人びとの間で争いが起きないように配慮しています。
さらに、活動のなかでも難民や避難民だけでなく、受け入れ先コミュニティの人々にも様々なかたちでピースウィンズの事業への「参加」を促しています。例えば、今年3月に行ったアッパーナイル州メルート郡での帰還民を対象にした食料配付では、帰還民に限らずコミュニティの人びとにも配付時の受付や待機列の整理を手伝ってもらい、彼らの一時的な収入を得る機会を提供しました。また、中央エクアトリア州ジュバ郡にあるゴロム難民居住地区での衛生と栄養に関する啓発活動では、その活動メンバーをスーダン人、エチオピア人、ウガンダ人など様々な国の出身者から選びました。さらに、学校での衛生啓発活動を行う学生のヘルスクラブメンバーも南スーダン人だけではなく、スーダン人やエチオピア人など難民の生徒から選び、国籍や属性の壁を超えてみんなで難民居住地区の衛生と栄養の改善に取り組めるような活動となるよう工夫しました。このように様々なバックグラウンドを持った人たちが、一つになって同じ目標に向うように「参加」を促すことで、属性にとらわれない結束力が高まると考えています。
ご紹介した「対話」と「参加」のようにアプローチを工夫することで、活動を通して人びとの平和的な共存、つまり「南スーダンの平和構築」への寄与に繋がっていると考えています。
「平和的な共存」への意識は、人びとの中にも根付いています。先に触れたアッパーナイル州での食料配付では、配付する食料を運んでもらう人手を探すために、支援対象地域のコミュニティリーダーに相談したところ、自分たちが受け取るものではないのにも関わらず、帰還民たちの受け入れ先コミュニティの人たちがボランティアで運搬を手伝ってくれました。この出来事を通して、「平和的な共存」、「助け合う精神の尊さ」を垣間見ることができました。
南スーダンでは今年12月に、独立後初となる大統領選挙が予定されています。国の「平和」を願う気持ちは、南スーダンの人びとも、難民の人びとも同じです。ピースウィンズの南スーダン人スタッフも、平和な未来を望み、実施する活動を通して平和な国の実現のために行動しています。情勢を注視しつつ、ピースウィンズは、必要とされる支援を、南スーダンの平和構築への貢献を意識ながら継続していきます。
＼平和をつくるために、2分でできること／
