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【ウクライナ危機】国内避難民(IDP)の声 ~インタビュー第2弾~

11月に、ピースウィンズのスタッフがウクライナ西部のリヴィウを訪問し、国内避難民の方々から直接お話を聞くことができました。その様子を2回にわたりお伝えします。
第2回目は、避難所”Razom dlya ditei” (子どもと共に)で生活するユリヤさんのお話です。遠い日本ではなかなか聞くことのできない避難民の方の声を、ぜひお聞きください。
 
ユリヤさん
 
「幼い娘と生き延びるためにマリウーポリ(ウクライナ南東部)(注1)から逃げてきました。当時、マリウーポリでは水も食べ物も暖房も電気も何もなく、生活できる状態ではありませんでした。避難すること自体も悪夢のような体験で、どんな方法を選んでも危険が伴いました。行政側が準備したバスは(ロシア側の攻撃がやまず)結局使えず、自家用車で避難する場合は、常に狙撃されるリスクがありました。本当に怖かった……。今でも思い出すと息が詰まります。
当時、ロシア軍側が提示した唯一の避難ルートは、ヴォロダースキ(ニコルスキの旧称で地元ではよく使われている)まで行き、そこからドネツク市(ロシア軍に実効支配されている)か ロストフ市(ロシア領内)のどちらかに行く、というものでした。私はどちらにも行きたくなかった。そこで、無謀ともいえますが、地元の学校でもどこでも雨露をしのげる場所を探してしばらく(ヴォロダースキで)隠れて暮らそうとしたのです。幸い、地元の方が住む場所を提供してくれました。」
 


ユリヤさん(左)

 


 避難所の特設子どもコーナーで遊ぶユリヤさんの娘さん

 
「しばらくしてヴォロダースキからさらに避難できそうな状況になってきたので、自家用車を持っている人にお金を払って娘ともどもザポリージャまで行き、そこから電車に乗りました。4月半ばのことです。
 
リヴィウ駅に着いてびっくりしたのは、駅にボランティアの方々がたくさんいて、到着したばかりで右も左も分からない私たち避難民がどこかに泊まれるように手助けしてくれたこと。最初に行ったのはどこかの使われていない寮で正直、住める環境ではなかったのですが、その後、市役所の手を借りて、幼稚園や前よりも住みやすい寮など一時的な避難所を転々としてきました。その後、今いるこちらの避難所に移ることができて本当にほっとしています。
 
以前よりもボランティアの方々が訪れる回数や支援物資の数は減ってきましたが(注2)、それでも支援を受けられることに感謝の気持ちでいっぱいです。」
 
ユリヤさんはマリウーポリからの逃避行で体験したことがずっと心から離れず、今もRight to Protection (ピースウィンズ・ジャパンの本事業でのパートナー団体)の心理カウンセリング(注3)や処方された薬を頼りにしています。特にカウンセラーに話すことは大きな慰めになっていると言います。
 
「両親をマリウーポリに残しているんです。父には心臓の持病があるのに、連絡が取れないので薬がまだあるのかも分からないし、薬を送ることもできない……。」
 
「夫も軍隊にいて、ずっと連絡が取れません。娘はいつも『パパと話したいよー』と言うのですが、なんと説明したらいいのか……、結局『パパの携帯電話は壊れているから、今は話せないのよ』と言い聞かせています。」
 
「マリウーポリでは皆がロシア語を話していたので、私たち家族もロシア語が母語でウクライナ語はあまり得意ではないのです(注4)。そのせいで、ここで仕事を見つけるのが難しくて……。支援を受けられるのはありがたい一方で、足りないものを買うことすらできない自分が情けないです。」ユリヤさんは諦めずに仕事を探し続けると言います。
 


避難所で最年少(11ヶ月)の避難民ミラーナちゃん(左)

 
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ピースウィンズ・ジャパンは、イリーナさんの暮らす避難所があるウクライナ西部リヴィウに暮らす国内避難民を対象とする支援事業を開始しました。ニーズの高い避難所において、国内避難民を対象に、食糧キット、衛生用品キット、心理カウンセリング、法律相談、そして避難所用の簡易医療機器(血圧計や車椅子など)を提供する予定です。現在は、ウクライナの提携NGOのRight to Protection(R2P)と共に、リヴィウの避難所を訪問し、最終的な支援対象施設の絞り込みと配布物資の調達を行っています。
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(注1): ウクライナ南東ドネツク州のアゾフ海に面する港湾都市。2014年のロシア軍侵攻時はウクライナ側の最前線となりました。2022年3月からロシア軍の激しい攻撃を受けて街の90%が破壊され、現時点でロシア軍の占領が続いています。
(注2): 一定期間が過ぎると世界の関心は薄れ、支援が次第に減っていく「支援疲れ」の現象が現れます。
(注3): 避難民は女性と子どもが大半を占めており、夫や高齢の両親と離れることで、心身ともに不安定な避難生活を送るケースが多いです。最近、奪還された都市に住む住民の間でも、電力や水などと並んで心理ケアがニーズの上位を占めています。
(注4): ウクライナ東部の人々は、ロシア語を母国語としています。ウクライナ西部に避難した東部出身者がロシア語を話すと、あからさまに嫌悪を示されたという例も聞かれます。
 

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